2/13 音楽便り「ラヴェル:スペイン狂詩曲」  藤井隆史・白水芳枝


M.ラヴェル (1875-1937) スペイン狂詩曲(1台4手連弾)より 4. フェリア

Maurice Ravel
(1875-1937)
from Rapsodie espagnole pour piano a quatre mains
4. Feria

ラヴェルはピアノデュオの作品が多い作曲家であり、ピアノデュオの主要なレパートリーも占めています。このスペイン狂詩曲は1907年に彼にとって最初の管弦楽曲として作曲され、2台ピアノ及び1台4手連弾も彼の手によって編曲されていますが、1台4手では手の交差や接近が非常に多く、ペダルの苦労も数知れません・・。

ラヴェルのデュオ作品の素晴らしさは、デュオの掛け合いをあえて意識させず、音楽を一つの和として大きく感じさせられるところだと思います。ただそこにあるだけの音・・例えばスペイン狂詩曲では4つの下降する連続音(ファ、ミ、レ、ド・・)が第3曲ハバネラ以外の曲中を蠢き、曲に統一感を作っていますが、その音形が聴こえるたびに、思い出や記憶などといった人間の奥深い世界へと誘ってくれるのです。音楽に、時間、香り、流れている空気など、目に見えないものを結びつけるのがうまい作曲家だと思っています。
ラヴェルらしい幅広い音域を使ったグリッサンドなど様々なテクニック、リズムの面白さもありますが、タイトルから受ける印象よりもスペイン色がぎらぎらと濃くなく、ラヴェル独自の瑞々しく、端整、そして細やかさも感じられる作品です。

これまでにこの作品を様々な会場で演奏してきましたが、お客様からの反応も良く、非常に人気のある作品です。
会場の響き、ピアノの状態、季節、湿度、お客様との相性などによって、この作品は生き物のように形を変え、様々な色、香りを醸し出し、演奏するたびに私達自身が新鮮な感覚を覚えるのです。

本日は、昨年12月の音楽便り「レーガー」と同じく、2006年4月1日 京都・青山音楽記念館 バロックザールでのリサイタル・ライヴ録音から、第四曲目「フェリア」をお届けします。
フェリアは日本語では「祭り」と訳されますが、日本のお祭りの印象よりも、もっと妖艶、色鮮やかで、退廃的だと感じています。

この作品からは、南フランス・アルルやワインで有名なボルドーを訪れたときの、少々危険な街の空気が、ふとよみがえってきます。
音楽と土地は、密接な関係にありますね。

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藤井隆史  白水芳枝

 

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